選択と集中なのか?
さて、池袋駅東側での池袋西武の立地を考えてきましたが、もう一つ注目したいのが、限られた売り場面積で何を売ることにしたのか、です。

今後もあるもの・今後はなくなるもの
発表されたリリースによれば、
近年お客さまからもっとも支持されている領域である「ラグジュア リー」「コスメ」「デパ地下」を中心に強化します。
とあり、
- デパ地下
- コスメ
- フレグランス
- 宝飾
- 時計
- ラグジュアリー
- ファッション
- 雑貨
- アートサロン
等が新たな池袋西武の取り扱い商品となるようです。
これまであったものとして、
- スポーツ用品(SEIBU SPORTS)
- インテリア
- こども服・こども用品(おもちゃ・ぬいぐるみなど)
は、改装のための閉店をもって取り扱いが終了されそうです。
ラグジュアリというのは、おそらく海外の高級ブランドのことを指していて、ルイヴィトン、ティファニー、グッチなどの高級ブランドの南側への移転交渉を行っているとの報道もありました。ルイヴィトンが現在北ゾーンに構える2階建てメゾネットタイプの店舗は、2022年頃に改装工事を終えたばかりでルイヴィトン側が改装プランについて「承認しない」[5]とするなど、対立が心配されていました。しかし、現在では「撤退はしない」と表明したとする報道も出ており、今後の移転交渉が注目されます。
ラグジュアリに集中。外商が強み。
今回、フロアプランでも予想した通り、改装によって前面に押し出されたのが、ラグジュアリ製品です。リリース文にも以下の記載があります。
「ラグジュアリー」では、世界のトップ約 60 ブランド を集結し、メンズ&レディース複合ショップで展開(売場面積 現状比約 1.3 倍)。
(中略)
そごう・西武の強みでもある、お得意様向けの外商機能 も今後さらに強化して参ります。
池袋西武の源流である西武百貨店は、国内アパレルブランドを広く扱う三越や高島屋などの呉服系百貨店に対抗し、いち早く海外ブランドの取り扱いを始め、ブランドブームを巻き起こした張本人です。近年もインバウンドの増加などに伴い、こうしたラグジュアリ製品の売り上げが伸びているそうです。また、お得意様向けの外商部門での売り上げも大きいと言われています。
ただ、外商部門は今後苦戦を強いられる可能性もあります。池袋西武の売り場面積が狭くなれば、必然的に取り扱う商品が少なくなりますが、これは外商部門でお得意様に提案できる商品の選択肢が少なくなることを意味します。本店で扱う商品の種類が大きな影響を与えかねないとの指摘[6]も納得できます。
デパートメント(区分された)ストアから脱する、ファッションでのインクルージョン
西武が長年強みにしてきた、ファッションの取り扱いについても注目です。
今回の改装では、「INCLUSION(インクルージョン)」がテーマであり、「現代の多様で柔軟な時代性に合わせ、「婦人」と「紳士」両方の カテゴリーを同一の店舗内に広く展開します。」としています。これまで、5階が紳士服フロア、3,4階が婦人服フロアでしたが、こうした区分をやめて、同一フロア内に婦人服・紳士服を混在させるというのです。
こうすることで、カップル・友人と一緒に来店しても、紳士服と婦人服が同じフロアにあるため、紳士と婦人が両方ショッピングを同時に楽しめるということでしょうか。また、紳士服と婦人服の中間というか、いずれにも分類されるような商品も扱いやすくなります。
特にジェンダーに関するダイバーシティーとインクルージョンは近年大きなテーマですが、池袋西武といえばセゾン時代以来、積極的に消費者にメッセージを出し、啓蒙してきた歴史があります。今回のインクルージョンというテーマも消費者への問いかけとなるのでしょうか。
ダイニングパーク池袋はどうなる?
レストランは残る
さて、プレスリリースを見ていて一つ予想外のことがありました。それは、8階に展開されている、レストラン街についての記述が見当たらなかったことです。改装後もレストラン街を続けるのであれば、そのように書くでしょうし、書かれていないということは、池袋西武の中にはレストラン街はおかれなくなると推測してもいいでしょう。
但し、今あるレストラン街がなくなるか、と言われればそうでもない気がします。百貨店のような大きな商業施設にはフードコートであれレストラン街であれ、形態は色々あるにせよ、昼時になっても建物から出ずに食事をとれる場所、あるいは昼時になったら食事をとるために入れる場所を作っておくことは重要です。
おそらくは、ヨドバシカメラのコンテンツとして、レストラン街が上層階に入るのではないかと考えています。実際、秋葉原のヨドバシカメラや、同じく池袋にあるヤマダ電機LABI1にも上層階にレストラン街があり、ヨドバシカメラがテナントとしてレストランを残すことは何ら不自然なことではありません。
ファッションの西武、食の東武
ところで、池袋駅には、池袋西武の他にもう一つ百貨店があります。「東武百貨店池袋店」です。こちらは池袋西武の駅を挟んで反対側である、西口側に店を構えていて、番地分けされたフロアが15階(その上に屋上階)もある関東最大の売り場面積を誇る百貨店です。
池袋西武がファッションの先駆者となり、池袋から新たなファッションを提案・発信しているのに対し、東武池袋店は国内最大級のデパ地下とレストラン街を併せ持ち、食を強みに展開していることが分かります。レストラン街「SPICE」は、本館の11~15階と別館にも展開され、両館合わせて51店舗にも上るレストランがあります。
一方の池袋西武のレストラン街は8階の中央・北ゾーンにダイニングパーク池袋として展開されており、店舗数は20~30程度です。池袋西武としては売り場面積が半減する中で、これまで池袋西武が強みにしてきたジャンルの商品をより強化するために、レストラン街をヨドバシカメラの管轄エリアにすることにしたのかもしれません。
食と緑の空中庭園はどうなる?
現在、9階相当の屋上に展開されている食と緑の空中庭園がどうなるのかも注目です。ヨドバシカメラが屋上に何かを展開する可能性はあまり高くないため、これまで通りの空中庭園が維持されるのかと思っていましたが、讃岐うどん「かるかや」や、フードエリアに9店舗あったフードカートは3店舗まで減っていて今後の展開が読めません。また、以前あったレストラン&バーのLa Terrasseの閉店後の場所には、新たなお店が入らない状態が続いています。
2015年の大規模改装を経て誕生した「食と緑の空中庭園」は、「空のほとりで逢いましょう」のコピーの通り、一昔前の百貨店の屋上とは異なる、上質で少し異世界感が漂う居心地の良い屋上庭園でしたが、今後どのようになるのかが注目です。