2025年のグランドオープンに向け、改装工事中の西武池袋本店(以下: 池袋西武)。
ご存じの通り、もともと西武池袋本店建物を含む不動産が親会社を通じてヨドバシホールディングスに売却されました。これにより、ヨドバシ建物が「ヨドバシHD池袋ビル」として、建物を管理・運営、池袋西武がヨドバシHD池袋ビルの1テナントとして出店する形態に変更されたようです。

工事期間中の垂直移動問題
上の図からわかる通り、2025年のリニューアルオープンに向けて、大改装工事中の池袋西武ですが、以前の記事(【社説】池袋西武はエレベータが難しい)で池袋西武の垂直移動に関する課題について考えました。
百貨店のドル箱とも言われる『デパ地下』が、7階に移動し『デパナナ』として仮営業を開始したことにより、地下や1階などと7階以上の高層階の間を移動したい人はたくさんいる一方で、2~6階の改装工事に伴いエスカレータは運用停止中。
必然的にエレベータが大変な混雑になっていたのです。
問題の7階からの下り
地下1階からの上りについては、大きな問題に思えませんでした。
エレベータは6機ありますが、全機が地下1階止まりで必ず折り返し、上りの始発になります(地下2階工事中のため)。たくさんのお客さんが待っていても、エレベータが到着すれば、空の状態から相応の人数を載せることができ、比較的問題なく上層階に向かうことができるからです。
一方で、『デパナナ』がある7階からの下りはそうもいきません。南エレベータは12階まで直通しており、10~12階のロフト、9階の専門店等から乗っているお客さんも多く、混雑時間帯は到着してもほとんど乗れないこともあるからです。
解決の鍵の2台のエレベータ

そこで、以前から問題の解決の鍵だと考えられていたのが、南ゾーン端にある2機の旧型エレベータ(図の5,6番)の存在です。このエレベータは8階までしか通じていないエレベータで、10~12階に接続していないことが、7階からの下り需要を満たすのにぴったりなように感じられるのです。
ただ、このエレベータは平面図からもわかる通り、フロアの隅の方に位置しており、フロアの中央にある図中の1~4のエレベータに比べると目立たないという性質がありました。1~4のエレベータからはある程度離れており、両方のエレベータを見て先に来た方に乗るといったことはなかなかしずらい状態です。
結果として、5,6番のエレベータは停止階も少なく速達性が高いにも関わらず、多くの利用客が1~4のエレベータに集中してしまうことがありました。
繁忙期運用の本気
さて、こうした状態は9月にこの形態での運用が始まった当初こそ問題でしたが、最近では繁忙日・時間帯を中心に7階でのエレベータ整理が行われることにより改善がみられています。休日の夕方等、特にフロアが混雑するタイミングに7階に行くと、最大6人程度の売り場係員の方が案内を行っています。

- 1~4のエレベータから降りてきたお客さん(主に地下からの上り)を売り場に誘導し、エレベータ前のスペースを空ける。下りエレベータを利用したそうな人に列(③)に並ぶように案内、到着下りエレベータに空きがあれば、並び列の先頭(⑤)から利用客を案内
- 1.と同じ
- エレベータ並び列の最後尾をプラカードを用いて管理
- エレベータ案内全体を管理。周辺にいる人に下りエレベータは列に並ぶ必要があることなどを広報
- 並び列先頭を管理。エレベータ到着に合わせ乗れる人数だけを案内し、満員になったら列を止める。5,6番エレベータ用の列がはけたら、並び列の先頭15人を5,6番エレベータ並び列に案内する
- 5,6番エレベータが到着したら、5,6番エレベータ用並び列の15人を案内。列がはけたら、5番から15人もらい5,6番エレベータ用並び列を形成。新たに下りエレベータに乗りたそうな人がいれば、3番の最後尾に行くように案内
※4番は車椅子・ベビーカー優先エレベータですが、特に区別なく案内されていました。
日や時間帯にもよるものの、多いときで6人ほどの店舗係員でお客さんを案内している光景を見ることができます。
不公平感が少ない案内
この案内により、1~4の30人規模の主力エレベータと、8階始発の比較的すいている5,6のエレベータの両方をフルに活用することができることに合わせ、並び列が1つに統合されているため、先に来た人が先に到着したいずれかのエレベータに乗ることができることになります。
人間は待たされるのも嫌ですが、それ以上に『損している』、『無駄な時間を過ごしている』、『らちが明かない』と感じることに苛立つことが多いと思います。一方で、他の人に抜かされることなく、先にいた自分に確実に早く順番が回ってくる仕組みであれば、多少の待ち時間は気になりません。
9月にこの形態でのエレベータ運用が始まった当初、7階から低層階に下るのに想像以上に時間がかかり苛立ちを隠せないお客さんも見かけることがありましたが、この効率化された案内には「なんかすごいね」といった声を漏らしている人もいました。
「なんかすごいね」=「なんか(すごく効率的に管理されていて)すごいね」という意味でしょうね。僕も並んでいて少し感動しました。
並び列は長く見えたものの、比較的スムーズに列は進み続け、数分でエレベータに乗ることができました。特にどのエレベータの前で待ってるのがいいか、先に来る可能性が高いエレベータはどれかを考えなくていいのは、かなりストレスフリーです。
誘導問題と池袋西武
これは一見すると、何の変哲もない話のように思えますが、利用者の効率的な誘導は大きな課題であり研究分野です。限られたリソース(制約条件)の中で、なるべく多くのお客さんを流したい(目的関数の最大化)といった課題は、商業施設を中心に様々な日常生活の場面で試行錯誤されています。
池袋西武が、改装期間といった制約条件が厳しい中で、効率の良いエレベータ運用をしているのを見ると、人間本来の問題解決思考が刺激され、『面白い』と感じられます。『やっぱり、池袋西武のエレベータが面白い』と。
7階・8階のプレステージ雑貨の仮営業も11月・12月に入り、本格化してきました。まだ準備中のショップもありますが、年末に向けてますます盛り上がりを見せる池袋西武、何度通っても飽きませんね...。
情報本稿は私の個人的な意見を多く含みます。正確な情報が必要な場合は公式情報をお確かめください。
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