謹んで新春のお慶びを申し上げます。
昨年中に賜りましたご指導とご支援に感謝申し上げますとともに、本年が皆様にとって安らかで、良いものとなることをお祈り申し上げます。
振り返れば2024年は、まさに発見と創造の一年でありました。
2024年の年始に掲げました、『作品公開至上主義』の考え方のもと、自身の学びや挑戦をいかにして作品として公開していくかに重きを置き、さまざまなことに挑戦してまいりました。このポートフォリオサイトや、授業教材サイト、2024年デジタル年賀状サイトなどがその一例でありますが、いずれにおいても、大学の授業・課題での成果や自らの学びを外部に公開するというプロセスが、より深く物事を考えたり、あるいは得られた知見の本質が何であるかを再検討したりといった活動につながってきました。本年はこうした取り組みを問題解決の視点をもとにさらに発展させていきたいと考えております。
近年、『問題解決』という言葉を耳にする機会が増えましたが、実際には私たちの日常生活の中で常に行われている営みでもあります。問題解決にはさまざまなモデルが提唱されていますが、市民レベルにおける理想的なプロセスは、以下の4つのステップに集約されると考えられます。すなわち、問題に直面した際には、「①目標を設定する」「②目標を達成するための解決策をできるだけ多く考える」「③各解決策のデメリットを検討し改善する」「④複数の選択肢から最適解を選ぶ」という流れです。
まず、「①目標を設定する」段階では、利用可能なリソースや制約条件を考慮するとともに、存在する問題や課題を目標という形に明確化する作業が求められます。次に、「②解決策をできるだけ多く考える」段階では、創造的な思考が重要であり、幅広い視点から代替案を検討することが鍵となります。そして、「③解決策のデメリットを検討し改善する」および「④最適解を選ぶ」段階では、物事を批判的に分析する力が必要です。この批判的検討を通じて、解決策の有効性や適用可能性がより正確に評価されます。
この中で、一番難しいのは②の「解決策をできるだけ多く考える」であると考えられます。①、③、④はある程度モデル化された考え方やプロセス、あるいはアルゴリズムに従って一定程度の成果を生むことが可能ですが、②は統一的な作業手法や考え方のモデルが全ての課題に共通してあるわけではありません。しかしながら、②の「解決策をできるだけ多く考える」こそが、問題解決のコアであり本質であることは、疑う余地もありません。
我々はしばしば、「教養」とは何かという問いを問われることがあります。一般的には「その人の知識、経験、価値観、行動などを総合的に形成する文化的・知的な素養」などと考えられているわけですが、より具体的に日常的な物事に落とし込んで考えるとどうなるでしょうか。私は「問題解決の根拠や発想源となりうる知識・技能」であるという一つの捉え方ができると考えています。
スティーブ・ジョブズの有名な演説の中に、アメリカスタンフォード大学の卒業式(2005)のものがあります。"Stay foolish, Stay hungry"というフレーズでよく知られるスピーチですが、私が注目したのが、スピーチの前半部分の"connecting the dots"というフレーズです。ジョブズが大学を退学した後に興味があって潜り込んだ授業がのちにマッキントッシュを開発する時に役にたったという文脈で次のことを話しています。
Again, you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
我々は、目標を決めてそこから逆算して物事を考える習性があります。それは問題解決の手段そのものなわけですが、皮肉なことに問題解決に必要な知識や技能(私はそれこそが「教養」だと考えています)は、将来の目標から逆算して取捨選択することはできないということをこの一文は示唆していると思います。自分の狭い興味関心に拘り過ぎず、幅広い視野でさまざまなことを学ぶことの重要性が指摘されていると捉えることができます。このことはスティーブ・ジョブズに限らず、多くの人が主張していることでもあります。
上の問題解決のステップの②の解決策として多様な代替案を発想したり、③、④において根拠のある判断を下すためにも、自身の専門分野にとどまらない「教養」を身につけることが大切だと指摘できると考えています。「教養」を得ることによって、我々は自由な発想をもとに、より良い最適解を求めて問題解決を遂行することができると結論づけられます。
近年インターネット上には多くの『裏技』や『大原則』といった統一的なフレームワークのようなものを謳った主張が見受けられます。そうしたものをもとにすれば、一見するとよりよく問題解決を行えるように思えますが、私はそうではないと感じています。ことわざでさえも真逆の意味を持つものが複数存在していたり、有名人の名言にも対立するものを目にしたりします。
我々人間は具体的な出来事を抽象化し、一般化された法則を導き出そうとします。それは、様々な課題に知見を汎化させるという点においては重要な営みですが、課題によって解決策が異なることも事実です。我々はこうしたことからも、安易に課題の解決策や答えを外部知識に頼ろうとはせず、自分自身で課題解決を進める能力を身につけ、実行していく必要があると指摘できます。
こうした視点から、2025年は様々な課題や分野の内容に積極的に取り組み、広い視野を持つ人間になれるように邁進して参ります。昨年同様、得た学びを公開していくとともに、その過程において問題解決のプロセスをより意識し、目標や目的から逆算する視点を持てるようにし、同時に見る人・使う人がワクワクするようなコンテンツ・サービス開発に努めて参ります。
引き続きご指導とご鞭撻のほど、何卒よろしくお願いいたします。